出勤時に思うこと
出勤時に思うこと

出勤時に思うこと

自宅を出て少し先にある事務所に向かう道すがら
かつては大企業として名を馳せた会社の工場群が眼下に広がる
何本も立つ大きな煙突からは絶えず煙が上がっていて
それは時には炎であったりもする

その煙の下にどれくらいのひとが働いているのかと想像すると
煤塵を撒き散らすだけに思える煙突にさえ物語を感じる
そこまで続く長い長いテールランプの列のうちどれくらいが
心弾ませてそこに向かっているのだろう
いないよね、たぶんみんな何かを守るためにその列に加わっているだけなんじゃないか

オフィス勤務になって
そこで小さく息づくカイシャイン達のひとりひとりが
大きな流れに巻き込まれていながらも
それぞれとしてひとなんだ、と頭では知っていたことを体感している

大切なあの人達はこんなところで何十年も息をし続けていたんだ
学校を出て、右も左もわからぬただ勢いのあるというだけの彼が
今や部下なるものを抱え組織側の人間として生きている
それは矛盾なのか
シュプレヒコールを上げる側から受け取る側へ
だけど彼のなにも変わってはいないという事実

わたしのマイコもまたひとり闘っていたひと。
命の猶予がないひとに寄り添い、彼らのために体制や効率化
それに迎合する同僚達と闘いながら
本人にそれを悟られることなく愛らしいエクボとチャーミングな低音ボイスでがはは、と笑う

患者さんをフルネームで呼び捨てにする彼女はまるで幼稚園児のような真っ直ぐさで
わたしの知りもしない彼ら彼女らのことを嬉々として話す

いま、医療が破綻しかけているという報道と
いや、濡れ手に粟でさんざん儲けてるぞという意見

企業なら環境に配慮して高炉を止めろ
いや、経済を支えるためにどんどん生産しろ

学校なら働き方改革で教員のプライベートを確保しろ
いや、公人なのだから滅私奉公があたりまえ

母親なら子ども達を社会貢献するニンゲンに育てろ
いや、個々の個性を伸ばすために社会性はドーデモヨー

食事は、衣服は、エネルギーは、カネは、生きるとは!

おっきな話をしなくても良いじゃない
Yahoo!ニュースに出てたとある工場の停電のニュース。
下期の〆直前の不幸な事故とそれは伝えていたけれどそれは
ほんとうは人身事故だったんだ、と
彼と家族に思いを馳せるひとがいたとして
わたしはそういうひとを心から尊敬する
全ての物語はごく小さなものだけれど
それを感じられなくなるなら
どんなに広い視野を持っていてもなんの意味もないと思う

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