とうとうやりやがったな…
とうとうやりやがったな…

とうとうやりやがったな…

明け方5:30過ぎ、勝手口付近、脱衣所前。
半身を横たえて足は勝手口のドアの外に放り出し
変に引っかかったままのサンダルを見つめてわたしは呟くのでした
何かってと脚に絡みついてすっ転ばそうとしやがるワイドパンツめ。

しばらく(ったってほんの数秒でしょうけど)そのまま
えもい言われぬ敗北感みたいなものに浸りつつ
まあでもジャストぴったりわたしサイズに何もない平たいところ選んでくれたものだぜ…とかなんとか今度は
もっとヤバい場所でそれが起きなかったことに思いを馳せてみたりなんかして。

これが高層ビルの最上階のベランダの手すりじゃなかったこと
細い細い日本刀の刃の上を素足で歩いている時ではなかったこと
大観衆の見守る中で綱渡りを披露しているときでなかったこと…
うむ。なんという幸運(転んで頭でも打ったか)

なんつて、まあそれは良いとしてさ。
思い出したの、いつか赤ちゃんおんぶしているときに
同じようなパンツはいていて、玄関先の階段で後ろ向きに転びかけたときのこと。

脳内を駆け巡る電気信号?のスピードってすごいよね。
一瞬でいっろんなことを思ったよ
自分が何処でどんな態勢でいるのか
このまま後ろ向きに転んだら赤ちゃんは無傷では済まないだろう、とか
ちくしょーいつか転ぶとは思っていたけど今かよ!とか
ごめん、ママのせいで怪我をさせてしまうんだ!とかさ。
どこにどう身を捩っても背中の我が子を無傷で守るのはもう無理だ、とわかったのよ。
そしてその時全てを受け入れたの。
ええい、ままよ!

そしたら本当に本当に不思議なことに
足の裏に確かな感触を覚えて…わたしは転ばなかったの。
そんなことはあり得ないことなんだよね、実際には。
嗚呼、あと階段の残り数段分の高さからの重さが赤ちゃんに全てかかるんだって諦めたくらいだったしね。
でも、その足の裏に感じた”確かさ”は微塵も疑いようのないくらいの確かさで
転ばないよ、ってことを伝えてくれた。

ってことをぼやーっと思いながら車を駐車場に停めて歩き出したとき
東の空から射す陽の光を反射させているビルの背中に
ぽっかりと白いまんまるお月さまが顔を覗かせているのが見えた。
「明」かぁ。

そうね、わたし達はみんなそれぞれちゃんと守られていることは自明の理ってやつなんだわね。

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