初めての出産を経験した朝、窓の外に見えた景色が
いつもと何も変わらないような気がしてなんとなく寂しかった。
世界はわたしとぜんぜん関係ないところで動いているような気がした。
けれど確かにわたしは自分ではない誰かをこの世に送り出したし
さっきまで、この地球上に暮らす誰かと関わることのなかったそのひとは
今確かにここにいてわたし以外の誰かと関わり始めている
世界は昨日より少し、変わったはず。
そんな尊い変化を知っているのはこの瞬間わたしだけだけのように見えたけれど
その実、世界はこんなふうにいつだって変化していたのだということ。
わたしがそれを見出さなかっただけで
毎分毎秒世界の何処かでは誰かにとって素晴らしいことも悲しいことも起き続けていた、ということ。
世の中が何も変わっていないじゃないか、と憤怒する必要はないし
むしろそれどころか変化を感じ取れない原因が何なのかを探しに出かけよう、と考えるほうがずっと楽しいと思う
世界はわたしが見たいように見えているのだということがきっとわかるようになる