「行って来ます!」
ランドセルをカタカタ揺らしながら曲がり角を駆けていったのを確認して
さて、今日が始まったぞと玄関のドアを閉めて
洗い物の続きをしようとキッチンに戻った途端、部屋に足音がする
何事?
振り返ると大輪の紫陽花を握りしめた末っ子が
息を弾ませたまま昂揚した様子で言う
「はい!ママ!」
ぎゅん、と差し出されたそれに面食らっていると続けて
「ご自由にどうぞ、って書いてあったからもらってきた」と言う。
学校へ続く階段のそばのお家の立派な紫陽花が今年も開き始めていたと思ったのは数日前
もう、こんなに開いたんだなと思いながら受け取る
「ありがとう、じゃあ一輪挿しにさそうかな」
再び、今度は振り返りもせず駆けてゆく後ろ姿に
まだまだ幼いなあとほっこりした朝。
あれからもう何日経ったかな
相変わらず綺麗な青紫を保っている姿に少し驚きつつ
やっぱり紫陽花は強いお花だなと
まあそれでもさすがに切り戻そうと、流しに出してびっくり。
あらあら綺麗に切り戻されている。
夕方、頬を真っ赤に染めて帰宅した末っ子に聞くと
「うん!毎日お水替えてるよ」と言う。
へえ、すごいね。
小学生の頃、摘んできたお花の水なんて替えたことあったかしら
もう、思い出せもしない遠い昔の記憶の欠片には
自分の机に飾った花瓶の水を腐らせちゃった、と書いてあった(笑)
そうそう。
水って腐るんだ、とその時知ったんだったわ…
末っ子、齢十年、されど充年。
この子にはきっとおばあちゃんが入ってるんだわ