名前のせいで、小さな頃わたしを「れんこん」と呼ぶひとがいました
大した語呂合わせってわけでもないのにばっかみたい
心の中でひっそり悪態をつく、そんな小学生でした(笑)
いま、わたしの名刺が入っているお気に入りの名刺入れは蓮根柄
名前がそうだから、ということはもとより
この世の中という泥水の中でこそわたし達は
ひとの目では見えない大切な栄養をもらって生きるのですから
泥は汚いからと忌み嫌うひとに真実を伝えたいと考えたからです
世の中に知られた聖者たちもそれぞれの時代にあって
争いや略奪、混沌の中で輝いたひと達でした
世が平穏だったならジャンヌダルクは現れなかったでしょう
もちろん、世を捨てて隠遁生活に入り、その生涯を
ひとならざる者との出会いのために向けたひともいます
それは宗教を越えて、どこにでも輝く星のように美しいものです
厳しい修行や深い瞑想の先に彼らが見出すものは
彼らを限りなく透明に近づける何かであるのでしょう
片やわたし達の毎日。
欲と裁き、痛みと苦さの連続
それらは念珠のひと粒ひと粒のように
ロザリオの珠のひとつひとつのように連なっています
ひとつ越えたら次のひとつ、そのまた次の、その次の。
身悶えしながら、唇をかみしめながら向かう一つひとつは
わたし達をみがく研磨剤のようなものです
それらを受け入れ続けたある日あるとき
越えて行った一粒が輝きを放っているのを見つけるでしょう
それは、辛かった出来事を祈りに変えた日のひと粒。
蓮根に例えるなら一節、またひと節と
わたし達はどんどんそれを伸ばし、その結び目から
すい、と伸ばした葉の先に大輪の花を咲かせます
それは水面の上
この世に例えるなら目に見えない世界でのことかもしれません
人の目には見えないところにこそ
わたし達が持つ真価の宝が積まれて行くのだとしたら
この、浮世の泥にまみれても
わたし達の中は美しく白いままなのかもしれませんね
れんこんという名前を戴いたことも、ありがとう。
わたしに出会って下さることを選んで下さった方のところへ
こんなお話を届けに行きます